米シリア攻撃で北からの核攻撃が現実に-1 アメリカファーストの本気度

●米、シリア軍へのミサイル攻撃にみるアメリカファーストの本気度

 米国防総省は、米東部時間4月6日午後8時40分(現地時間7日午前4時40分)ごろホムス近郊にあるシリア軍のシャイラト空軍基地を巡航ミサイルにより攻撃したことを明らかにした。
 同当局者によると、使用された巡行ミサイルは通常弾頭の「トマホーク」で地中海東部に展開する米駆逐艦ポーターおよびロスの2隻から60発が発射され内59発が基地施設に着弾したという。

 この背景には、4日、シリア北部イドリブ県のハンシャイフンで化学兵器を使ったとみられる空爆があり、在英の民間団体「シリア人権観測所」によると、少なくとも11人の子供を含む58人が死亡、160人が負傷し、今年シリアで発生した化学兵器使用が疑われる攻撃で最大級の民間人の死傷数となったことがある。
 トランプ大統領は、この攻撃をシリア政府によるものと断定し、「アサド政権はレッドラインを超えた」と非難した。
 この化学兵器使用を受け緊急に開かれた国連安保理ではアサド政権を非難する決議案が出されたが、アサド政権を支援してきたロシアが拒否権行使の構えを見せたことについて、「ロシアがシリアに影響力があるのならば、我々はその行使を見る必要がある。ロシアが動くまでに一体あと何人の子供たちが死なねばならないのか。国連として集団行動をとらねばならない時がある。私はここに1つ加えよう。国連が共同で行動する義務を怠り続けるのなら、国家が自分たちで行動せざるをえない場合もある」と述べ、アメリカ単独での軍事行動の可能性を示していた。

〇中東情勢の安定化はもはや重要ではないアメリカ

 軍事介入ともとれる今回のアメリカによるミサイル攻撃に世界は驚いた。全くといっていいほど動こうとしなかったオバマ政権のことを考えると、アメリカがまさか実弾を発射するなどとは夢にも思わなかっただろう。
 実際、1990年の湾岸戦争当時に比べ、米国内ではシェールオイルの産出によりエネルギーの大半を自給自足できるようになったため、わざわざ中東のオイルに頼らなくてもよくなったのだ。このため、アメリカの国益に対する中東情勢の重要度はこの数十年で大きく低下しており、危険を冒してまで戦闘する必要がなくなっていることも大きい。

〇絶妙の攻撃タイミングは天賦の才能

 さて、トランプ大統領は、ミサイル攻撃の直後に発表した談話において、「もはやシリアが禁止されている化学兵器を使い、化学兵器禁止条約における義務に違反し、国連安保理の要請を無視していることは、議論の余地はない。これまで数年間の、アサドの行為を改めさせる試みは全て失敗に終わった。それも劇的な失敗に終わった。結果として難民問題は深刻化し続け、この地域は不安定化し、アメリカや同盟国に脅威を与えている」と語り、攻撃の正当性を強調した。
 トランプ大統領としては、今回の悲劇を再び繰り返してはならないという素直な正義感もあっただろうが、大半は、入国禁止令やオバマケア撤廃取り下げなどで政策実行力に疑問符が打たれつつある状況に対し、政策の中心に据えている強いアメリカの復活を国内外に示す絶好のチャンスととらえ、ミサイル攻撃に踏み切ったという見方が大半だろう。
 実際、このタイミングは絶妙で、あと数日遅れていれば、トランプ政権内にためらいがあったと世界はみて、即断即決を標榜するトランプ大統領の威勢は恐れるに足らないという評価になっていただろう。しかし、トランプ大統領は、そのような緻密な計算もなく、タイミングは今しかないと直感し攻撃に踏み切った。もちろん、直感だけで戦争をしてよいわけはない。あらゆる選択肢がテーブルの上にあるという意味は、すべてのケースをひとつずつ緻密に検討し議論し、いざというときにそのオプションを選択した場合の対応策も準備しているということだ。そして、どのオプションを選択するかの最終判断は大統領にあり、今回ミサイル攻撃のオプションを即座に選択したのは、事業家としての天性の才能がなせる業であろう。

〇今後の外交政策に大きく影響した先制攻撃

 さらに、トランプ大統領自身が気付いているか定かではないが、今回の攻撃は今後のアメリカの外交政策において非常に有利に働く可能性がある。
 敵対する中国、ロシアにとっては、あまり派手にやりすぎると困ったことになることをわからせる強烈な牽制球になっただろうし、シリア難民問題で頭が痛いヨーロッパの同盟諸国に対しては、泥沼化しているシリア情勢が安定化する糸口になる可能性もある。アメリカが旗を振ってくれさえすれば大規模な軍事行動に参加するための大義名分となるし、早期にシリアが安定化すれば難民問題も解決できるため、国内の移民受け入れ反対の声が高まり支持率が低下するヨーロッパ諸国の現政権へ恩を売ったことにもなるのだ。
 賛否両論あるトランプ大統領ではあるが、交渉の天才といわれるだけのことはありそうだ。

 ビジネスの世界で大成功をおさめたトランプ大統領、今度は世界を相手にアメリカファーストを目指している。大半の人はそう簡単にはいかないだろうと思っているようであるが、天賦の才能を持つトランプ大統領、もしかすると実現の可能性はそう小さくないのかもしれない。

USS_Ross_(DDG_71).jpg
駆逐艦ロス(Wikipediaより)

ハンシャイフン.JPG
ハンシャイフンの地図(毎日新聞より)

ミサイル発射映像(BBCニュース)


この記事へのコメント

スポンサーリンク