米シリア攻撃で北からの核攻撃が現実に-3 自衛隊は弾道ミサイル迎撃能力を強化せよ

●自衛隊は弾道ミサイル迎撃能力を強化せよ

 さて、金正恩が最後の選択肢をとった場合の悲劇的な結末に対して、日本のとるべき行動は何だろうか。
 これまでのように粘り強く対話を求めるなどの甘い路線はもはや通用しないことは明らかだ。かといって最前線に立って戦闘するわけにもいかない。戦争は国内外の世論が許さないだろう。日本が単独で制裁強化してみたところで、また中国へ制裁強化を迫ったところで、前述したように世界中にネットワークを持つ北朝鮮にとっては大した効果はない。今の日本にとって唯一とることができる選択肢が単独の制裁強化しかなく、安倍政権としては国内へのアピールの目的でしかないのは、なんとも情けないと言わざるを得ない。
 では、金正恩の最後のシナリオを指をくわえて待つしかないのだろうか。金正恩体制を打倒するために払う代償としては大きすぎるだろう。

 この状況下において、日本国民を核攻撃から守る唯一の方法は、ミサイル迎撃能力を高めることしかない。
 平和ボケした多くの日本人は、実際にミサイルなど飛んでくるはずはないと考えるだろうが、その確信にはなんの根拠もないだろう。事実、北朝鮮のミサイル開発は着実に完成度を高めている。北朝鮮の実力を見誤ってはいけない。

〇スカッドミサイル(火星5号、6号、ER)

 北朝鮮のミサイル開発は、旧ソ連がナチスドイツの弾道ミサイルV2をベースとして開発したスカッドA(R-11/SS-1B)の改良型であるスカッドBミサイル(R-17/SS-1C)を1980年代初めにエジプトから入手し、これをコピーしたことから始まった。このスカッドBは射程が300キロ程度で北朝鮮では「火星5号」と名付けられ大量に実践配備され、一部はイランなどに輸出された。その後改良が加えられ、ロケットの推力を強化し最大射程が500キロ程度の「火星6号」(北朝鮮製スカッドC)が開発された。
 その後、2017年3月6日に4発同時に発射し、内3発が日本海の排他的経済水域内に落下したミサイルは最新のスカッドERであることが判明している。
 スカッドミサイルは、NATOのコードネームであり、ラインナップとしてはスカッドA、B、Cに加え、1989年に登場し誘導精度を高めたスカッドDがオリジナルの最終型とされている。これ以外に、イラクによるスカッドB改良型を「アル・フセイン」、北朝鮮によるスカッドB改良型を「火星5号」、スカッドC改良型を「火星6号」と呼ぶ。 
 スカッドERは弾頭および構造を軽量化し、推進剤タンク延長により射程を1000キロ程度に延長したものであるが、北朝鮮名は判明していない。

〇ノドン

 90年代に入りスカッドを大型化した「ノドン」を開発し、最大射程は1500キロ以上あるとされる。ノドンについては、北朝鮮の呼び方など詳しいことはわかっていないが、2012年の軍事パレードで、TEL(運搬車両兼起倒式発射機)に搭載されたノドンとみられるミサイルが確認されている。

〇テポドン1号(銀河1号または白頭山1号)

 ノドンにスカッドCを組み合わせた多段式弾道ミサイル「テポドン1号」(白頭山1号、または銀河1号)を開発し、98年に発射実験を実施している。テポドン1号の最大射程は1600~2000キロに達すると見られ、日本列島全域を攻撃範囲に収めることができる。

〇テポドン2号(銀河1号改良型)

 北朝鮮は長距離弾道ミサイル開発をさらに進め、2006年7月6日、3段式とみられる大型ミサイル(テポドン2号)を舞水端里(ムスダンニ)の発射施設から打ち上げたが発射直後に異常燃焼を起こし墜落、失敗に終わった。

〇テポドン2号改良型(銀河2号、銀河3号、銀河3号改良型、同改良型)

 2009年4月5日には、テポドン2号改良型として、3段式の「銀河2号」の発射実験に成功し、北朝鮮は人工衛星「光明星2号」を地球周回軌道に投入したと発表した。実際に周回軌道に衛星が投入された形跡はないものの、銀河2号は2段目以降が少なくとも3600キロ飛行しており、3段目が正常に機能していれば最大射程は6000キロ程度に達する。その後、同タイプの「銀河3号」の打ち上げを2012年4月13日に実施したが、発射の2分15秒後に空中で爆発し失敗に終わった。
 しかしその後、2012年12月12日、東倉里(トンチャンリ)の発射場から「銀河3号改良型」とみられる大型ロケットの発射実験に成功し、北米航空宇宙防衛司令部は、このロケットにより衛星と見られる飛翔体が周回軌道上に投入されたと発表した。「銀河3号改良型」は最大射程1万キロに達すると見られ、米国本土西海岸が射程に入ったことになる。
 さらに、2016年2月7日には同じくテポドン2号改良型を東倉里から発射し、弾頭部を地球周回軌道に乗せることに成功した。この時の飛行データを解析すると、最大射程は1万2000キロに達している。しかし、これらの弾道ミサイルは地上の専用の発射台から数日の準備を経たのちに打ち上げられており、偵察衛星で事前に察知可能であった。

〇ムスダン

 2016年4月15日から新型の中距離弾道ミサイル(IRBM:Intermediate Range Ballistic Missile)の発射実験を開始した。ムスダンは1990年代初期に入手した旧ソ連製潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM:Submarine Launched Ballistic Missile)のSS-N-6を改良したものとみられており、発射台付き車両(TEL:Transporter Erector Launcher)に搭載され運用される。すばやく移動して発射準備にも時間のかからないことから発射場所が特定されにくい。最初のムスダン発射およびその後の複数回の発射実験はいずれも失敗したと考えられるが、同年6月、東岸の元山(ウォンサン)付近より発射されたムスダンは1,413.6km(北朝鮮発表の最大頂点高度)に達し、約400キロ飛翔して日本海に落下しており、高高度に達して短い距離を飛翔させるロフテッド軌道で発射されたものとみられ、技術的にも進歩していることが確認された。

●弾道ミサイルの迎撃システムの現状

 もっとも効果の高い迎撃方法は、地上発射準備段階で巡行ミサイルにより発射施設もろとも攻撃することであるが、当事国との全面戦争につながりかねないだけに政治的に取りにくい選択肢である。
 これ以外には、ミサイルが発射されてから着弾するまでの間の空中を飛翔中の段階で撃墜するしかない。しかし、射程距離が1万キロを超える長距離弾道ミサイルで飛行時間は約30分、射程300キロ程度の近距離ミサイルでは5分程度しかないため、その中で確実に迎撃するためには、高度な探知技術と攻撃技術とからなる大規模なシステムを構築する必要があり、最新のテクノロジーを用いても難易度は高い。

 米国は、弾道ミサイル迎撃システムを1950年代から研究し、当初は落下してくる敵ミサイルの近くで核兵器を爆発させる方式で開発が進められたが、1975年に完成したのち、自国上空で核爆発を起こすのはあまりにもリスクが大きいことから、間もなく姿を消した。そのため、米国は70年代以降、地球周回軌道に赤外線センサーを搭載したDPS監視衛星を配置する早期警戒システムの構築を目指して開発をスタートさせた。しかし、高高度に達する長距離弾道ミサイルは検知しやすいが、短距離ミサイルは低高度ですぐに落下してゆくので探知が困難であった。
 90~91年の湾岸戦争では、イラクが発射したスカッドミサイルをDPS衛星で探知することはできたが、迎撃用のパトリオットミサイル(PAC-2)で捕捉できたのは4分の1程度であり、打ち漏らしたミサイルが着弾することで甚大な被害が出た。そのため、米国は衛星を高機能なタイプに順次入れ替え、新たな低軌道衛星を使い探知・追尾性能を向上させている。

 現在実践配備されている主な迎撃システムは、SM3、THAAD、PAC3の三つである。
 弾道ミサイルの飛行軌道は、発射直後に加速して急上昇する「ブースト段階」、ロケットモーターの燃焼が終了して軌道の頂上に達し、落下を始めるまでの「ミッドコース段階」、目標に向けて超高速で落下する「ターミナル(終末)段階」のフェーズに分けることができる。このうち、ブースト段階では、ミサイル発射を探知して迎撃ミサイルを発射しても、その軌道に到達するまでの時間がかかることから困難である。短距離ミサイルだとブースト段階の時間は数十秒であるため、迎撃ミサイルは物理的に到達できない。米国はこれを高出力レーザー兵器で撃墜する研究を続け、ある程度成功したがコストが高すぎることから凍結された。ただ、引き続き小型化、低コストを目指して研究は続けている。

 弾道ミサイルはミッドコース段階では徐々にスピードを落とすので、物理的には迎撃の可能性が高くなるが、放物線の頂点は長距離ミサイルで高度1000キロを超え、短距離ミサイルでも高度300キロ程度になるため、弾道ミサイル発射直後から直ちに軌道を検知して到達時間と位置を計算し、そこに届くような高速の迎撃ミサイルと、確実に狙いうちできる高性能追尾技術が不可欠になる。

〇スタンダードミサイル

  米国は高性能迎撃ミサイルとして「スタンダードミサイル」を開発し、SM-1,SM-2を経て、現在SM-3が実践配備されている。同じSM-3でもブロックⅠA、ブロックⅠBなど性能が異なるブロックが存在し、日本はSM-3のブロックⅡAから開発に参加した。高度なレーダー索敵機能をもつイージス艦と組み合わせることによりイージスBMD(弾道ミサイル迎撃)システムとして一定の完成を見ている。
 SM-3による迎撃はこれまで模擬ミサイルを狙った発射実験が何度も行われ、正確な命中率は軍事機密として公表されてないが、かなりの確率で迎撃に成功したとさている。ただし、弾道ミサイルが打ち上げられる場所などがあらかじめわかっていることからミサイルの軌道を発射直後からレーダー追尾できることが前提にある。

 以下の動画の出典が明らかではないが、迎撃システムを比較的わかりやすく解説しているため参考までに紹介しておく。

 ミッドコース段階で打ち漏らした弾道ミサイルは、最終的にターミナル段階で迎撃する必要がある。
 弾道ミサイルが地上に落下するスピードはマッハ3~24という超高速であり、これは、拳銃の弾丸に弾丸を当てて迎撃するようなものである。

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イージスBMDシステム(毎日新聞より)

〇THAAD

 米国は2005年からターミナル段階初期での迎撃手段として「終末期高高度地域防衛(THAAD)システム」の開発を進めている。米国防総省は2011年10月にTHAADシステムの迎撃実験に成功した。THAADはSM3などミッドコースの迎撃システムが苦手とする短距離、中距離弾道ミサイルにも対応が可能とされているが、技術的な課題も残っている上、保守整備コストも明らかでなく、日本が導入する計画は今のところない。

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THAADミサイル(時事ドットコムより)

〇PAC3

 ターミナル段階で日本が備えている迎撃手段は、今のところパトリオットミサイル(PAC3)だけである。PAC3は湾岸戦争で使われたPAC2の後継システムだが、ミサイル構造から大幅に見直された。PAC2は弾道部を目標近くで爆発させてその破片で破壊するタイプであったが、PAC3はTHAADやSM3と同じ弾頭を直接目標にぶつける運動エネルギー弾道を採用し、命中精度を高めるため、飛行最終段階で小型のロケットモーターを噴射して姿勢と方向を制御することができる。
 機体は全長5.2メートル、発射重量900キロでPAC2より小型化されているが、迎撃エリアは高度で2倍に広がった。ミサイル発射台、索敵・追尾レーダー、射撃管制システムから構成されるが、それぞれトレーラーに載せて陸上移動が簡単にできるため、広域に展開することが可能。(時事ドットコムより引用編集:特集一からわかるミサイル防衛) 

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PAC3ミサイル(時事ドットコム)

 盤石そうな迎撃システムであるが、実は大きな落とし穴がある。政府は巨額な費用をシステム開発に投じたため、最終的にできませんでしたという説明は到底できない。ある程度の成果が得られた点を強調して、国民に対しては迎撃システムが完璧であるかのような錯覚を与えているにすぎない。では迎撃システムの完成はウソかというとウソではない。それは、弾道ミサイルの発射地点と時間があらかじめわかっていた場合はという前提で完成しているのだ。つまり、北朝鮮がTELを使ったムスダンを発射した場合、発射地点があらかじめわかっていないため、迎撃は困難である可能性が高いのである。

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